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2016年7月より,生活習慣改善を中心に様々な話題について掲載していきたいと思います.

                                                                                 上山博康脳神経外科塾 塾頭

                                                                                 禎心会病院脳卒中センター長       谷川緑野

ヘルシンキ大学脳神経外科 Microsurgery Live Demonstration Course

毎年6月の第1週に開催されるヘルシンキ大学での脳神経外科手術教育コースというものがあります.世界中の脳外科医の中では,知らない人はいない有名な脳神経外科手術の教育のための学会です.この学会は2001年にヘルシンキ大学脳神経外科教授のJuha Hernesniemi先生が開催してから,今年で18回目を数える歴史のある教育的な学会で,私は2010年にHernesniemi教授から請われて参加しています.今年は40名ほどの若手脳外科医が世界中から参加し,講師として私の他には,米国Barrow Neurosurgery InstituteからMichael Lawton教授,Arcansas Ali Krischt教授,チューリッヒ大学 Luca Ragli教授,Berlin Sharite大学からPeter Vajcozy教授が招かれ,ヘルシンキ大学現教授のMika Niemera先生とともに,担当症例の手術を参加者の先生方に実際に見学してもらい,その後解説と術式な手術技術,手術解剖について詳細に議論を行います.

今回私が手術をデモンストレーションしたのは,もやもや病,再発巨大脳動脈瘤,未破裂脳動脈瘤などの病気で,禎心会病院で手術を行うのと同様に術前に患者さんとその家族と会って,術前の説明を行って必要な手術を行います.英語が話せる患者さんの場合は,いいのですが,理解が不十分になる場合には現地語でヘルシンキの先生方が通訳をするスタイルで術前のインフォームド・コンセントを行います.

特に毎年,私に頼まれる症例は,通常の術式では対応不可能な,過去に何度か手術を受けたにもかかわらず,再発してしまった高難度の脳動脈瘤の患者さんが多く,かなり神経を使います.日本とヘルシンキの時差は夏はー6時間ですので,さほど大きな時差でもないのですが,夕方はすでに日本の真夜中だと考えると少し慣れるのに時間がかかります.1週間はちょうど時差が解消されつつある頃に帰国することになります.今年は当院からは助手として太田仲郎先生と橋本集先生についてきてもらいました.彼らにとっても海外での手術の助手は貴重な経験になったはずです.術中はすべて英語での指示をしながら,麻酔科医,直接・間接介助の看護師さんと協力して手術を行います.幸いにもフィンランド人はほとんどの人がよく英語を話せるので,コミュニケーションは円滑に進めることが出来ます.

当然の事ではありますが,各脳外科医によって受けてきた手術教育は全く異なるので,同じ病変を手術するにしても,それぞれやり方が異なり,使う手術道具も全く違うため,多くの参加者の先生方はそれらの違いを目の当たりにして,自分が何を吸収すべきなのか,今後何を勉強し習得すべきなのかをこの学会の1週間で感じて帰ることになります.今年は日本からは3名の若手の先生方参加しており,彼らもまた何かを感じて帰国したものと思います.

 

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日本脳卒中の外科学会 STROKE2018

3月15日から福岡で開催されたSTROKE2018 脳卒中の外科学会に来ています.今回私は一般講演で「過去5年間の札幌禎心会病院での脳動静脈奇形の治療成績」と高難易度脳動脈瘤に対する外科治療のシンポジウムで「巨大・血栓化膿動脈瘤に対する治療戦略」と題して講演をさせていただいました.

この5年間に札幌禎心会病院脳卒中センターでは20例の脳動静脈奇形の患者さんに外科的治療を行ってきました.

その結果95%の患者さんで予後良好な治療成績を収めることが出来ました.脳出血やクモ膜下出血で発症した破裂脳動静脈奇形の患者さんでは90%,未破裂脳動静脈奇形の患者さんでは,100%の患者さんが予後良好な結果となりました.

2014年に発表されたARUBA trialの結果,未破裂脳動静脈奇形では外科的治療を含む治療介入よりも内科的治療(経過観察)のほうが予後良好であったとされ,未破裂脳動静脈奇形の治療適応に世界的な変化が見られるようになってきましたが,当院での治療成績では未破裂例では予後良好例が100%であり,破裂例でも90%で予後良好だったことが,正確な術前診断と適切な術前塞栓術の併用と高度な手術技術の組み合わせによって,良い成績が得られることを示しました.

 

 

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糖尿病予防を確実に行うために

やっと最近になって,糖尿病治療を行っている内科の先生方の中でも糖尿病管理の指標としてHbA1cは信頼性が低く,耐糖能異常など糖尿病準備状態の評価が出来ない問題が指摘され始めました.HbA1cは過去2-3ヶ月間程度の平均の血糖値を見ているだけで,特に問題となる食後過血糖の状態は隠されてしまい異常として見えない点に問題があります.例えば,HbA1cが6%で正常域にあり,糖尿病ではないと診断される場合でも,実際には食事の内容によっては食後血糖値が250-300mg/dlに到達する場合があります.これは明らかに耐糖能異常を来しているわけで,いずれこのような患者さんはいわゆる糖尿病に移行します.しかし,HbA1cだけを指標にしていたのでは,そのような患者でも一見正常に見えるので,過剰な糖質摂取という食事内容に問題があるにも関わらず,その問題を捉えることが出来ないわけです.II型糖尿病は間違いなく「食生活習慣病」であり,過剰な糖質の摂取が原因ですから,炭水化物を含む糖質を適切な量だけ摂取する食生活にすることで,本当の糖尿病発症を防げるはずなのです.残念ながら現代の日本人の食生活は炭水化物への依存度が50~70%程度となっていますから,中年以降特に40歳以降この割合で炭水化物を3度の食事で摂取し,更に間食としてお菓子やスイーツなどを摂取すれば,容易に糖質過剰状態を私達の体内で作ることになります.この過剰な糖質がどうなるかは先日の記事でもお話したとおりです.

 

特に当院で治療した脳卒中患者さんの99%は,糖尿病があるか,耐糖能異常がある状態でその半数以上の患者さんが再発を繰り返します.薬物治療,特に抗血小板剤による治療は「血液をさらさにして,血管が詰まりにくくする」などと説明されることが多いと思いますが,この薬物治療は起きてしまった動脈硬化性病変による狭くなった脳血管や心臓の冠動脈などの血液の流れを助ける一定の効果はありますが,そもそも動脈硬化を引き起こした原因となる(食)生活習慣を病前と同じように続けていたのでは,まさに焼け石に水となり,再発の原因となるのです.

その食生活習慣を改善するための根拠として経時的な血糖値のチェックが有効で、当院では入院中に採血により1日の血糖値の変化を食前後を含めて観察し、耐糖能異常の有無を診断し糖尿病治療に繋げるようにしています。

 

つまり,脳卒中の再発も含めて予防のためには,薬物治療だけでは片手落ちで,食生活の全面的な見直しが必要となります.私達の札幌禎心会病院 脳神経外科 脳卒中センターでは,専門的治療としての薬物治療・脳神経外科的治療のみならず,食生活の改善にも力を入れて指導教育を行っていますので,お気軽に相談してください.

 

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糖尿病予防と根本治療のために

札幌禎心会病院 脳神経外科 脳卒中センターでは,5年前から脳卒中患者の糖尿病罹患率が高いことに注目してきました.糖尿病のコントロール(治療によって高血糖状態を制御すること)が不良な患者さんでは,脳卒中の再発リスクが高いため,単純に脳卒中を治療するだけでは不十分であり,脳卒中の原因となる動脈硬化の原因となり進行させる糖尿病を予防しコントロールすることにより,脳卒中再発を予防していかなければなりません.

脳卒中の危険因子(リスクファクター)として,高血圧,糖尿病,高脂血症,心疾患,喫煙,飲酒などがよく言われますが,

1)喫煙と飲酒は生活習慣であり,

2)高血圧は動脈硬化の結果であり,

3)糖尿病は食生活の結果であり,

4)高脂血症は遺伝性家族性高脂血症がある場合を除いては損傷した血管の修復過程を反映しているのであり,

脳卒中の根本原因を説明しているものではないと言うことです.

 

どういうことかというと,

1)喫煙と飲酒は全身の血管内皮に損傷を与える.

2)損傷を受けた動脈内皮にはコレステロールが修復のために沈着し,アテローマと呼ばれるプラークを形成し,細動脈では動脈狭窄が起こりやすくなり,結果高血圧となる.

3)過剰な糖質(炭水化物含む)の摂取により,余剰糖質は代謝の結果脂肪となる.この過程で全身を活性酸素(フリーラジカル)が駆け巡り,血管内皮を損傷する.その結果コレステロール沈着による血管の修復がなされ動脈硬化となる.

4)修復すべき血管が多ければ多いほど肝臓からLDL-コレステロールとして血中にコレステロールが放出されるため,血中LDL-コレステロールが高値となり,逆に末梢組織で使用されずに余るHDL-コレステロールは減少する.

 

脳卒中には,

1)動脈硬化の結果血管が詰まる脳梗塞

2)動脈硬化によって生じる硝子様変性によって脳の細動脈が破綻した結果起きる脳出血

3)脳動脈の動脈硬化の結果血管壁損傷による血管壁の脆弱化によって脳動脈瘤が生じこれが破裂した結果起きるクモ膜下出血

の3つの病態がありますが,

これらの病態は表現型が異なるだけで,根本原因はすべて動脈硬化であるということです.

 

そして,動脈硬化を引き起こす原因は,

「血管内皮に傷をつけること」

なのです.その三大原因が,

1)喫煙

2)過剰な糖質摂取

3)飲酒

なのです.

これらの3つの生活習慣はすべて,糖尿病の危険因子にもなっているということに注目しなければなりません.

1)なぜ喫煙が糖尿病の危険?

現在の紙巻たばこは様々な香りや味の調整のために多くの香り添加物や砂糖水を添加し,銘柄ごとに独特の特徴を出すように作られています.喫煙本数が増えるほど,糖尿病リスクが上昇します.

2)スイーツや炭水化物に偏った食生活により当分摂取は過剰になります.

3)アルコール自体が血管内皮を損傷しますから,飲酒量に依存して血管損傷の程度が悪化します.

 

糖尿病の原因は糖質に依存した食生活であり,これに喫煙,飲酒が加わることにより,動脈硬化を引き起こします.この変化は急激には起こらないので,20-30代ではほとんど脳卒中は起こらないことが多いのですが,このような生活を20年以上積み重ねることにより,40歳を過ぎたあたりから動脈硬化が進行し,高血圧が見られるようになり,同じ頃から糖尿病の症状が現れてきたり,脳卒中にかかったり,狭心症や心筋梗塞を引き起こす人が出てきます.つまり若いときの不摂生が20年-30年経ってからつけとして回ってくるのです.

 

 

 

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アルコールの発癌危険性

2018年1月11日イギリスのケンブリッジ大学の研究チームが,アルコールの摂取がDNAを破壊しガンのリスクを高めると科学雑誌「nature」に発表しました.以前からアルコール摂取が癌のリスクを高めるのではないかと指摘されていましたが,どうして発がん性を高めるのかのメカニズは解明されていませんでした.ケンブリッジ大学のパテル教授らは実験マウスにアルコール(エタノール)を投与して,生体での臓器の反応を確認し,エタノールがDNAの二重鎖を切断しDNA配列が元に戻らない状態になることを確認しました.

アジア人はもともとお酒に弱い民族ですが,アルコールを摂取したあとにアルコールが分解されてできるアセトアルデヒドは神経毒であることは以前から知られており,これがひどい二日酔の原因になると言われています.二日酔のみならず,このアセトアルデヒドはDNAの損傷を引き起こすので,これを分解するアセトアルデヒド脱水素酵素の活性が低いアジア人では,効率的にアセトアルデヒドを分解できないので,分解できる人(お酒の強い人)に比べて,DNA損傷が起こりやすく,発癌の危険性が高いということになります.

アルコールと関係が深い癌の種類として,

口腔がん

咽頭がん

食道がん

乳がん

肝臓がん

大腸がん

が挙げられます.これらの癌の発がん性のリスクはアルコールの種類とは無関係で,ワインでも,蒸留酒でも危険性は同じだと言われています.アセトアルデヒドの分解能力の高い人は一般的にお酒に強く,顔色の変わらない人が多く,残留アセトアルデヒドによるDNA損傷の危険性が低いのでお酒の強い人は発がん性も低そうですが,発がん性に関しては安全な飲酒量などないとも言われており,強い人でも注意が必要です.

はっきり言えることは,アルコールを飲んで顔が真っ赤になる人はアルコールによる発がん性が高い人ということになりそうなので,飲酒については用心が必要だといえます.

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